今年度は、卓越した教育サービスの提供者として、国立大学附属学校教員を対象とし、大学生を対象としたマンツーマンでの教育実習指導(以下個別指導という)において教員がどのようなサービスエンカウンターを展開しているのか、またその際の学生との間の学習関係構築メカニズムがどのようになっているのか、実証的に明らかにした。ここでの学習関係構築とは、サービス提供に当たってサービス提供者とサービス享受者が相互に相手方を知り、いかにしてインタラクションを行うかを学ぶことを通じた関係構築を指す。 具体的には、ベテラン教員と若手教員計8名を対象とし、個別指導の場面を録音して文字化し、会話分析を行うとともに、教員を対象としたインタビュー調査を実施した。 分析の結果、学習関係構築のために教員側が学生を観察して理解する程度や、学習した内容に即しながら教育内容・方法を臨機応変に変えていくといった教育サービス提供の方法に関しては、ベテラン教員と若手教員との間で顕著な差が見られなかった。しかしながら若手教員の多くは、自分自身が未熟であった時の経験を基準にして、学生の習熟の程度を理解し、教育内容・方法を変えていく行動が見られるとともに、このような行動に接した学生側も、教員が自分たちを理解してくれていると認識して教員を信頼するといった態度を促進していることが推測された。 このように若手教員においては、学習の際の判断基準をはじめとする学習関係構築メカニズムがベテラン教員と異なっており、このことによって教育サービスを享受する方法や教育内容そのものの理解が十分ではない学生(教育サービス享受者)の視点に立った教育サービス提供が促進されていた。本研究では以上の結論が得られた理由について考察を行った。
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