■本研究の目的:日米の2008-09年選挙とその後の政権運営における、対有権者市場開発訴求戦略技法としての政治マーケティングの展開とその民主的意義を、異なる政治制度を架橋する多元的モデルに基づき実証的に解明する。 ■平成22年度研究実施計画の焦点(1):多元的政治制度における政治マーケティングの機能検証と意義評価のための理論的手続き的検討(継続中) ○研究成果 (1)Lees-Marshment(2009)による、異なる政治制度下でのマーケティング比較モデルの日本政治に対する応用妥当性の検討を行う。(2)大統領制の米、議院内閣制の日英間ですら、政権と政党間の意思決定力や戦略資源は異なる。政党の多様性をいかに多元モデルに編入すべきかを、専門研究者とのレビューなどを通じ検討中。 ○成果の意義 政治マーケティングの要素と概念は、日本分析にも十分適用可能であるが、公職選挙法による選挙運動の制約や有権者調査の未発達などから、月本は欧米型のマーケティング発展と異なる道程を辿ると予想される。 ■平成21年度研究実施計画の焦点(2)(3):2008年以降の日米選挙と政権運営のマーケティング事例分析(継続中) ○研究成果 2008年米大統領選挙および2009年衆院選以降の日米民主党政権における「変革」公約の実現過程、その制約と戦略的再定義の過程、選挙と政権の戦略異同を、報道内容および主要政党への聴取を通じて調査分析した。 ○成果の意義 (1)米政権は2010年中間選挙での民主党敗北後、ターゲット有権者を中道シフトし、2012年再選に向けて公約の公共性再建の実質的再定義に着手した。課題は大企業や中央政界のステークホルダーとの関係改善である。(2)日本の民主党政権は、連立政権を組む他政党や政党内部の軋轢のために組織的マーケティングが機能していない。公約の再定義も、政策調整力と広報力が不十分のため、安定性信頼性に欠ける。これらの欠陥は、東日本震災後の統治能力欠如において一層明白化した。対抗する自民党は、組織的広聴および広報に改善がみられるものの、政策プロダクトの戦略的修正と再定義という実質的な側面で、政治状況を主導的にコントロールする水準には至っていない。
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