研究課題/領域番号 |
22530450
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
平林 紀子 埼玉大学, 教養学部, 教授 (30222251)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 選挙 / マーケティング / 米国政治 / 日本政治 / 民主政治 / 政治コミュニケーション / メディア / 公共経営 |
研究概要 |
■本研究の目的:日米の2008-09年選挙とその後の政権運営における、対有権者市場開発訴求戦略技法としての政治マーケティングの展開とその民主的意義を、異なる政治制度を架橋する多元的モデルに基づき実証的に解明する。 ■平成24年度研究実施計画の焦点:2008年以降の日米選挙と政権運営のマーケティング事例分析(継続中) ○研究成果 米国についてはオバマ政権第一期から2012年大統領選挙での再選を経て第二期政権が始動する過程、日本については2009年衆院選以降、2012年末の総選挙敗北と下野までの過程における両政権の「変革」公約の実現過程、選挙と統治のマーケティングの異同を、報道内容ならびに実務専門家、学術研究者への聴取を通じて調査分析した。また日米マーケティングの政治的役割と制度背景の比較に関する両国研究者および実務家の研究交流会を行った。 ○成果の意義 ①オバマ第一期政権は08年選挙公約の7割を実現、再選選挙でも変革の継続と実行に焦点をおき再選を果たした。第二期政権でも挑戦的な政策議題を掲げ、08年以降一貫性ある変革ブランド展開がみられる。②ただし党派対立のもとで個別政策のブランド構築に資源を割けず、政治の透明性や国民対話などの変革も不十分で、選挙と統治のマーケティングの相克を示す。③日本の民主党政権は09年マニフェストの変更を含めて政権与党としてのコンセプト不在、政策調整力や広報公聴力の欠如のために信頼を失い、変革政党としてのブランドは崩壊して2012年総選挙で敗北し下野した。組織的な統治マーケティングはほとんど機能しなかった。④安部自民党新政権の始動後3カ月を見る限りでは、同政権は現職の議題設定力と広報力を活かし、アベノミクス推進など経済再生に焦点をおく政権ブランドの構築およびステークホルダーを含む組織内マーケティングに積極的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国の事例研究は予定通りに進捗している。日本の事例研究は、09年以降とくに3.11東日本大震災以降の政治環境の変化、政策課題の著しい増加、政策優先順位の変化、加えて民主党政権の意思決定過程の不透明性のために、情報収集と分析に予想以上の時間がかかっている。加えて2012年12月総選挙における民主党敗北と政権交代の背景を、マーケティングの観点から多角的に分析する必要があることから研究上の作業量が著しく増加している。
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今後の研究の推進方策 |
① 日本の民主党政権に関する情報収集については、政治資金報告書や備忘録などの公開出版資料の分析に比重をおくとともに、計量データの二次分析の対象の絞り込み、日本政治専門家によるレビューの実施などを通じて、研究の効率化を目指す。 ② 本研究のテーマに直接関連する他の業務(単著研究書の執筆、英語研究誌への論文投稿)との、研究内容における連携、連動性を強化し、本研究に対するエフォートの実質的水準の引き上げを目指す。
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