研究概要 |
今年度は、情報の非対称性が不可避である専門サービスの一事例として、保険薬局の薬剤師が提供する医療サービス(服薬指導)に対する知覚結果を問う調査を行った。同時に、回答患者にとっての当該薬局、当該薬剤師、今回の疾患、当該処方薬等の経験の有無、自覚症状の変化、情報の必要度などを確認した。結果として、北海道、秋田県、広島県の各チェーン薬局に協力いただき、回答患者が12,000名を超える規模にて質問紙調査を実施できた。この回答データを基に、情報の非対称性が専門サービスにおける知覚品質の評価構造にどのような影響が与えているかを、主に共分散構造分析によって比較検討した。先行研究に基づき設定した評価次元は想定どおり抽出され、中核(コア)サービスと考えられる服薬に関する情報提供に関する評価次元よりも、補完的サービスと位置付けられる過程品質に類すると解釈できる評価次元の影響度の方が高く、このような評価構造からも情報の非対称性の影響が示唆された。すなわち、顧客(患者)は専門サービスにおいては、情報の非対称性の影響から、サービスが提供される目的に、より合致したコア・サービス要素よりも、"手がかり(cue)"としての非中核的サービス要素がいわゆる"シグナル"の機能を果たしていると考えられた。このことは、コア要素と補完的要素にそれぞれ区分可能な評価次元の因子間相関が高いことからも伺えた。また、情報の非対称性の状況、すなわち情報偏在の程度の相違により、各評価次元から総合評価次元への相対的影響度(評価構造)が異なることも明らかとなった。特に当該処方薬が未経験(初めて)の場合は、評価構造が他と比べて大きく異なることが示された。これらの研究成果は、消費者行動研究学会や日本商業学会等で発表した他、現在は学術雑誌へ投稿中である。
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