本研究の目的は、消費生活を豊かにし、地域と国際社会に貢献する小売マーケティングのあり方について、多面的な視点より理論的・実証的に探ることにあった。そのためには、小売業が、いかにして、広がりつつある個人間の所得格差とその地域間格差に対応しつつ、地域の消費者の生活の質の維持・向上に努めているかを明らかにすると同時に、地球環境問題への国際的取り組みや地域社会への貢献活動についても具体的事例を調査することを必要とした。そのためには、国内の消費者を対象とする定量調査と内外の専門家との情報交換や小売企業への定性的調査が予定されていた。このような計画のもと、初めの2年間で、小売マーケティング研究に関する文献の収集とレビューに努めた。また、かつ現状把握のため、実際に内外の小売店舗や企業を訪れたり、海外の研究者との研究交流も行ってきた。その上で、本年は、国際的な研究交流、研究成果の海外での報告、日本国内での消費者アンケート調査などの活動を行った。まず、国際的な活動としては、ミシシッピ大学のチャールズ・インジーン教授(小売研究の世界的権威)と、7月にソウルで開かれた国際学術会議で共同研究報告を行った。(同氏とは、2006年にも共同研究報告を上海で行っており、その際の論文は「最優秀論文賞」を受賞している。)また、カナダ・コンコーディア大学のミッシェル・ラロッシュ教授とは、6月に上海で開かれたロイヤルバンク主催の国際研究会議で研究報告を行った際に、別途、共同研究の打ち合わせや、学術情報交換を行った。他方で、高齢化社会を迎えた昨今、新しい小売業の在り方を考えるうえで、ネットショッピングの現状と課題を探るべく、消費者アンケート調査を実施した。研究助成を頂いた3年間の研究成果は、これからも学会や論文などの形で公表し続ける予定である。
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