本研究は、中量輸送機関が果たす役割に注目し,我が国と欧米を中心とする諸外国の公共交通政策の比較分析により、都市交通問題で我が国が抱える問題の解決に向け政策的示唆を得ることを目的とする。最終年度を迎え、一定の成果を達成したと考える。 補助金をはじめとする国内諸制度が交通システムに与える影響:過年度には交通分野と福祉、都市政策の関係を中心に、諸制度の現状と関連性を分析した他、トラムを新規導入した富山市を事例に導入経緯と補助制度の役割について調査を進めてきた。本年度は、対象をコミュニティバスにまで広げて、「富山県南砺市における市町村合併とコミュニティバス再編」として成果の一部を発表した。またこれら成果をふまえ、対象範囲を拡大して分析の一般化を目指した。具体的には、わが国の乗合バス事業について生活路線維持と補助制度の関係や、地域公共交通会議の果たす役割を分析して、「乗合バスにおける生活路線の維持と協議会の果たす役割」として論文にまとめた。 海外の先進諸都市の事例調査:海外における先進事例との比較分析をすすめた。これまで研究対象となることが少なかった非英語圏のフランスの都市内公共交通について調査を行ってきた。フランスにおいては、近年、交通基本法(LOTI)が廃止され交通法典が制定されたが、両者の違いを明らかにすると共に、その背景や影響について、最近のナントのBuswayなど高品質なバス(BHNS)導入の動きと関連させながら、わが国への示唆を明らかにした。またフランスでなぜ軌道系交通機関の整備が進められてきたかについて、導入当時のナント市長アラン・シェナール氏らにヒヤリング調査を行い、これまで日本ではあまり取り上げられることがなかった当時の状況を明らかにした。これら成果の一部は、「フランスにおける都市再開発とトラム整備」や「フランスにおける都市交通の新たな潮流」として論文発表した。
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