研究課題/領域番号 |
22530460
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
木村 純子 法政大学, 経営学部, 教授 (00342204)
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研究分担者 |
田中 洋 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (60286002)
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キーワード | ビデオグラフィ / 消費文化論 / ラグジュアリ調査 / 定性的調査 / CCT |
研究概要 |
2011年度当初はインドでの調査を考えていたが、東日本大震災が起こり、震災に関する消費行動に焦点を切り替えて調査を行った。具体的には、東京、仙台、陸前高砂、福島市、二本松にてフィールドワークとインタビュー調査を実施した。いわゆる原発避難者と呼ばれる人たちを対象に避難場所での生活と消費者心理を明らかにすることを目的とした。 Belk(1985)はマテリアリズムを消費における重要概念であると規定した。マテリアリズムの最高レベルとして、所有物は人の人生の中心的位置にあるとされ、満足と不満足の最大の源泉になると考えられている。所有とアイデンティティは密接な関係にある。拡張自己とは、消費者が自らの自己を保持しており、それをさまざまな対象物を所有することによって拡げようとすることである(Belk1988)。消費者は所有によって自己に対する考え方や感情を定義したり構築したりする。 マテリアリズムに浸された世界に生きていた消費者が、2011年3月11日に突如として故郷を喪失した。所有物をすべて失っただけではなく、彼らは故郷も追われることになった。故郷は、そこに住む人の拡張自己であると捉えられる。本研究は、拡張自己としての故郷をいったんは失った人々が、消費によって自己(アイデンティティ)を補うのであろうか、自己回復に消費がそのように関わっているのかを明らかにする。調査は、2011年4月(大学生)、5月(大学生と主婦)、7月(浪江町出身の主婦)、8月(福島市に避難している主婦、二本松に避難している主婦)、11月(青雲に避難している夫婦)を対象にインタビュー調査を行った。発見物として、日本では消費によって自己を補わなくていい満たされた難民であることが明らかになった。基本的な生活ニーズは満たされていること、故郷を喪失はしたものの消費行動を変えるまでのダメージではなかったことが理由として考えられる。2012年度も引き続きこの点を追求する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は科研費交付予定額の70%までは立替申請が認められていたものの、残りの30%は減額になる可能性があったため、調査の実施が当初の計画から大幅に遅れた。具体的には東日本大震災の被災者に対するインタビュー調査を開始できたのは9月に交付が満額になると決まった後であった。調査が終了した後、データのかきおこしを外部業者に依頼した。文書データを速やかに手にすることができず、分析が遅れ、交付申請書に記載した研究の目的の達成度が若干落ちた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度当初はインドでの調査を考えていたが、東日本大震災が起こり、震災に関する消費行動に焦点を切り替えてフィールドワークを行った。具体的には、東京、仙台、陸前高砂、福島市、二本松にてフィールドワークとインタビュー調査を実施した。平成24年度は、23年度に収集したデータの分析を進めるとともに、あらたに原発避難者を対象に東京における生活と消費者心理を明らかにする。
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