研究概要 |
本研究の目的は、日本の生命保険業界が直面する企業倫理上の課題のうち、特に販売従事者が実務上直面する倫理的課題の本質を明確にすることである。1980年代のアメリカのユニバーサル保険、1990年代の日本の変額年金の販売時の説明をめぐる問題に代表されるように、日本はアメリカから遅れて同様の商品を販売し、同様のトラブルに直面することが多い。そこで、アメリカの保険専門職が直面する倫理的課題に関する先行研究で培ってきたアンケートを日本の生命保険販売従事者の状況を十分に考慮・反映させた上で実施することにより、日本の具体的な倫理的課題の特性を指摘し、今後の業界のコンプライアンスへの取り組みや、規制の在り方の指針を示す。 研究最終年度は、前年度末に行ったweb.アンケートのデータ解析からはじめ、同時に、5月にはどれまでの研究成果を韓国保険学会年次総会で報告した。その後、8月から9月にかけて、日本、アメリカ、さらにブラジルで、web調査の分析結果を研究者と実務家に広く問いかけ、最終的な研究成果発信のための作業に入った。最終成果は、2013年7月開催のアジア太平洋リスク保険学会第17回年次大会(Asia-Pacific Risk and Insurance Association 17th Annual Conference)で報告予定で、2013年2月に提出したプロポーザルは受理された。また、本研究の比較検討のために同時並行で行ってきた自動車保険に関する調査の結果も出そろい、その成果は2013年6月発行の論文「自動車保険加入時のリスク認知に関する調査:金融商品購入決定モデルに基づく検討」『損害保険研究』vol.75,no.1(印刷中)で公表されるが、この中でも本研究の成果が示されている。
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