研究概要 |
前年度までに構築したモデルは,各々の主体が自分自身の最適行動(部分最適)を行うことに焦点を当てて研究を進めた.例えば,確率過程を考慮した需要予測モデル(IJMTM)や在庫管理モデル(JOMSA)である.しかし,個々の主体の最適解を求めても,全体最適になっているとは限らない.また,企業間で情報の非対称性が発生しているのが実情である.その結果,モラルハザードや逆選択の問題が結果的に生じてしまう.このとき,メンバーにおける妥当な意思決定を選択させる方法(例えば,シグナリングやスクリーニングなど)を用いて上記の問題解決を行なっているのが現状である. 最終年度である本年度では,2つの供給業者(例えば,製造業者と小売店)での情報の非対称性のあるサプライチェーン取引政策の一考察を行う.具体的には,Eric Suckyによって構築された非対称情報の取引ゲームのモデルを用いて,メンバー間の取引政策における経営・経済的解釈を考察する.その結果,ゲームにおける均衡状態が分離均衡とプーリング均衡が生じる結果を数値例で見つけた.この結果を,今年5月に法政大学で開催される日本経営工学会全国大会(2012春JIMA)に発表する予定である.さらに,解析的にも証明ができることを今進めていて,この結果は6月に東洋大学で開催されるJOMSA(オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会)に発表する予定である. 以上のことに基づいて,最終報告書をまとめる次第である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデルの構築は多くの文献の収集ができたので対処することができ,また,数値例もシミュレーション実験を行うことで対処できていたが,解析の部分で非常にとまどっていた.最近になって,突破口ができ,その部分が解決できたので,最終年度では,積極的に論文の発表・論文投稿を行い,最終的な報告書をまとめて,当初の計画以上の結果を出すことを考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
数値実験だけでモデル構築の評価を行うのではなく,今後は,解析の部分も取り入れてモデルの評価を行う必要がある.11で述べたように,最近になって,解析部分の突破口ができたので,レベルの高い論文の構築を目指している.また,最終的な報告書をまとめることにも労力を惜しまず対処する予定である.
|