研究概要 |
本研究の実施計画として,平成22年度は小売国際化論に関するこれまでの研究蓄積を踏まえた上で,理論研究を深めていくことに取り組むことができた。まずは,小売商業の中での国際事業の意義や国際化の学問的位置づけを考え直すことにした。第1に,小売商業の特徴や役割を理解すること,第2に,小売商業の構造を「規模」「業種」,そして「業態」などの多面的な側面から巨視的に概説し,歴史的発展の概要や現状を把握した。また,小売企業の基本的な行動枠組みについて検討してみた。第3に,小売商業の動態に潜む法則性を説明する代表的な理論として「小売の輪」の理論と「真空地帯理論」について,業態の盛衰を,グローバル的な視点から考え直すことにした。国境を越えて新業態が生み出される現状を小売国際論でどうみるべきかを,「流通の国際化」で記述している。小売業の国際化についての具体的事例を提示した後,小売業における日本企業と欧米企業の海外進出の歴史から国際化の違いを確認し,そのうえで外資系小売企業からみる日本市場の魅力とアジア市場における競争から欧米小売企業の強みを分析している。小売業態の国際的移転に成功したケースから新しい小売業態の生成・発展プロセスを検討したうえで,世界標準にするための戦略についても考える必要性を強調した。専門店業態の国際的行動は流通の国際化は海外出店とともに,商品調達網の国際化をも必要とすることについても再確認を行った。日本市場で成功した流通外資のインパクトから日本の国内企業および日本型流通システムに与えた影響について考えることは日系小売企業の国際競争力の獲得について考えるにも必要であることを強調している。
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