研究概要 |
本研究の目的は,(1)監査基準で規定されているリスク・アプローチを理論的・実証的に解明すること,(2)解明した理論枠組みに基づいたリスク評価モデルをコンピュータ・システムとして開発することである。監査人に評価することが求められているリスクは,主観的に評価されることが多い。主観的なリスク評価は,評価結果の信頼性が社会的に問われたときには,多くの人々を納得させる根拠たりえない。リスク評価を客観化するには,ブラックボックスとなっていたリスク評価にかかる職業的な評価枠組みを理論的・実証的に解明し,多くの人々にその枠組みを活用できるようにすることが必要であり,本研究の目的は上記2点にある。 重要な虚偽表示リスクR剛は,リスク分析で広く一般化しているリスク概念の一つである「変動性」と対応させることができると考えられる。変動性を確定するためには,RMMがどのような確率分布にしたがうのか,すなわち,確率分布の形状を特定できるのかについて,実証しなければならない。RMMは,固有リスクと統制リスクを内容としており,これらは評価対象の状態に依存する。 研究第2年度(平成23年度)においては,監査リスクファクターの検出作業を実施した。使用したデータは,直近2年間の訂正報告書を提出した20社の財務諸表比率の分布と正常な財務報告を実施したランダムサンプル40社の財務諸表比率の分布とを比較し,分布が異なる財務比率をリスクファクターとみなした。監査リスクの先行研究のモデルで用いられた独立変数をすべて比較の対象とし,結果として3つのリスクファクターを検出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は平成22年度から24年度までの3年間にわたる研究計画に基づいて実施している。平成22年度は,内部統制監査の実態調査,平成23年度は,リスクファクターの識別を計画しており,それぞれ計画通りに実施した。
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