平成24年度の研究は、3年度にわたる本研究の最終年度に当たり、当初の研究計画通り、監査リスクのシミュレーションを実施し、その結果を論文「SIMULATION OF AUDIT PROCEDURE TO FIND A RISK FACTOR —DECISION OF THE OPTIMAL FREQUENCY OF AUDIT PROCEDURES—」にまとめ、第24回Asian Pacific Conference on International Accounting Issuesにおいて報告した。この論文は、本研究の集大成に当たり、その前年度までに実施した監査リスク・ファクターの発見結果に基づいている。特定のリスク・ファクターを発見するために何回の監査手続を実施すれば、最適となるのかについて監査資源のコスト・パフォーマンス分析をシミュレーションにより実施した。すなわち、シミュレーション・モデルを設定し、コンピュータを用いて特定の5つのシナリオごとに各1000回の監査手続を実施し、何回目でコスト・パフォーマンスが最高になるのかを探索した。結果としては、7回の監査手続が最適であることとなった。 本研究は、コンピュータによるシミュレーションであり、一定のシナリオの下で実施していることから、実際の監査実務のシチュエーションとは異なる。しかし、「過剰品質」監査(効果がないのにもかかわらず、非常に多くの監査手続が実施されている現実)やその一方で十分な監査手続が実施されず、その結果として、重要な会計不正が見過ごされていたケースが報告されているという監査実務に鑑みると、必要かつ十分な監査手続とは何であるのかという監査実務からの問題提起にアカデミアの側面から示した回答の一つとして評価できる。
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