平成22年度は、現行制度の国際比較研究を中心に研究を進めた。資本会計に関する先行研究、イギリス会社法、ドイツ商法に関する文献や、国際財務報告基準及びアメリカの会計基準を巡る動向に関する資料を収集し、国内外の研究者との意見交換を行った。 まず、払込資本の認識基準に関連して、イギリスでは、払込時点ではなく払込催告時点が制度上採用されていたことから、先行研究に関する調査の補充を行った。さらに、イギリスの研究者との意見交換の結果、払込催告時点と払込時点に実質的な差はないものとして、解釈すべきことが明らかになった。 アメリカ企業の年次報告書を調査した結果、United States Rubber Co.第20期(1912年5月21日)年次報告書6-8頁に、新たな株式報酬制度の採用に関する記述が見られ、その中で、同社が1904年にストック・オプションを用いた何らかの報酬制度を採用していたことを示す記述を確認できた。この点については、さらに研究が必要とされている。 株式報酬型ストック・オプションの会計処理を材料として、払込資本の意義・認識基準・測定基準の関係を考察した結果、払込資本の意義に着目して会計処理を整理するのではなく、払込資本を狭義で定義した上で、認識基準の前倒しと、測定基準の厳格化を組み合わせて整理するという発想が得られたので、2011年3月の研究会で発表し、国内における資本会計の研究者と意見交換を行っている。この発想については、継続的に検討を進め、精緻化を図る予定である
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