研究課題/領域番号 |
22530478
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 達司 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80191419)
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研究分担者 |
加藤 英明 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80177435)
中條 良美 阪南大学, 経営情報学部, 准教授 (00387383)
高橋 陽二 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 准教授 (20566533)
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キーワード | 財務会計 / 行動ファイナンス / アノマリー |
研究概要 |
[I]本研究における会計分野の研究成果は、次の通りである。金融商品取引法では、IPO企業の経営者による株式売却禁止期間が定められている。本研究では、IPO後の最初の決算期が,その期間内か否かに着目した。結論は、次のとおりである。IPO後の最初の決算期がその期間内にある企業については、企業年齢と監査法人の規模が裁量的アクルーアルを抑制し、そうでない企業については、これらの要因に関係なく、裁量的アクルーアルが計上される。市場は、IPO直後には一時的に裁量的アクルーアルに誤導されるが,それは持続しない。長期的に市場が評価するのは、経営者がIPO後も株式を継続保有しようとする態度である。これらの貢献は、次の2点である。第一に、日本ではじめて、日本の全株式市場を対象にして、会計操作とそれに対する株式市場の反応について、総合的な検証を行った研究である。第二に、金融商品取引法による経営者の株式売却禁止期間に注目した最初の研究であり、IPO直後の決算期がこの期間にあるか否かによって、IPO企業の利益操作、それに対する市場の反応が大きく異なることを発見した。これは、法制度の効果の検証という観点から、重要な貢献である。[II]本研究におけるファイナンス分野の貢献は、次の通りである。昨年度から継続した研究として、新規店頭公開時の投資家センチメント(応札倍率、価格乖離率)がIPO企業の価格形成に与える影響を検証した研究が、『証券経済学会年報』に掲載されている。また、ベンチャーキャピタリストの(1)コーチ役としての能力、(2)専門経営者の採用を含む強い経営チームの組成という2つの特徴を、日米の事例を検討することによって、その違いを明らかにした研究は、『ベンチャーキャピタルによる新産業創造』の第3章として掲載された。次に、新規の研究として、(1)IPO企業のコーポレートガバナンス、(211PO企業の価格形成という2つがある。(1)では、(1)大学の研究者が役員に就任している要因とは何か、(2)研究者が役員に就任することによって、業績パフォーマンスにどのような影響があるのかを検証した。大学研究者という名声から一定の保証効果が認められるが、モニタリング効果は限定的であることを明らかにした。(2)では、IPO企業の所在地に着目することによって、情報の非対称性モデルの再検討と行動ファイナンスの知見を応用し、IPO企業の価格形成を検証した。不況期において、投資家が情報にアクセスしやすい東京都であれば安心感を受けることから、より人気化する傾向があることが明らかになった。情報に対する投資家の捉え方の違いが、IPO企業の価格形成にいかに影響するのかを検討するうえで、興味深い結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究プロジェクトは、平成22年度から24年度までの3年間を予定しており、平成21年度は2年目である。それにもかかわらず、平成21年度において、学術論文4件、学会発表4件、著書の分担執筆1件というように、すでに多くの研究成果が発表されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、会計とファイナンスの融合研究である。上にも述べたように、本研究プロジェクトは順調に進展している。そこで最終年度である本年度は、IPOに関するアノマリーという観点から、会計学にもファイナンスにも一定のメッセージを発信できるように、両者の融合を重視して研究プロジェクトを推進する。
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