研究課題
初値が公開価格を上回るアンダープライシング現象は、国際的かつ永続的に生じている。主要なモデルとして情報の非対称性モデル(逆選択モデル、情報顕示モデル、プリンシパル・エージェントモデル、シグナリングモデル)がある。これらのモデルは、投資家、発行企業、主幹事証券会社という三者間での情報の非対称性を検討しており、部分的にアンダープライシング現象を説明している。近年、行動ファイナンスなどの情報の非対称性モデル以外のモデルも検討され始めている。しかし、上記の情報の非対称性モデルでは、発行企業、アンダーライターのなかでの情報優位者と劣位者の違いは検討されていない。そこで本研究では、発行企業の所在地に着目することによって、情報優位者と劣位者の違いを検討した。都市部にあるIPO企業は情報優位者であり、そうでないIPO企業は情報劣位者であると判断できる。そうであれば、より適切な価格形成が実現されるのは、都市部のIPO企業ということになる。しかし、楽観的な投資家が多い都市部のIPO企業であれば、アンダープライシングの程度が大きくなることが考えられる。また、IPO市場の好不況によって楽観的な投資家の数も異なることが考えられる。そのため、好不況期が含まれる2006-2010年を分析対象とし、上記の仮説を検証した。分析結果は、(1) 都市部のIPO企業は、都市部でないIPO企業と比べてアンダープライシングの程度が大きくなく、(2) 好況期でも同様の傾向が示された。分析結果より、不況期では、投資家は情報にアクセスしやすい東京都であれば安心感を受けることからより人気化する傾向があるものと考えられる。日本のIPO市場では、個人投資家が約8割を占めており、ローカルバイアスが好況期ではなく不況期にこそ強まるものと考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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