研究概要 |
証券市場を多くの情報を所有(more informed)している人と情報を少しだけしか所有(less informed)していない人に2分割して、その両グループの意思決定の違いが、彼らのリターンに及ぼす影響を分析した(Grossman and Stiglitz, "On the Impossibility of Informationally Efficient Markets", The American Economic Review, Vol.70, No.3, 1980, pp.393-408が有名.)多くの研究がある。しかしながら、われわれはそのような2分割に加えて、中位の情報を所有しているグループを加え、市場を3分割したほうが、より実際の状態に近いのではないかと判断し、実験室実験を試みた。そこで、明らかになったことは、中位に情報を所有している人が、情報を多く所有している人と少しだけしか所有していない人のリターンと比べて、平均では少ないリターンしか獲得できていないことを観察した。そして、その理由を脳活動に求めた。 本研究では、fMRI(functional magnetic resonance imaging)を使って、多く情報を所有する人、中位所有する人、少ししか所有しない人の脳の活動を脳血流で測定した。中位の情報を所有している人は、脳の中でその情報を見たとき、visual cortex、anterior cingulate cortex、middle frontal gyrus、inferior frontal gyrus、anterior insula、temporo-parietal junction、intraparietal sulcusが賦活していた。これに対して、情報を多く所有している人と少しだけしか所有していない人は、 intraparietal sulcus しか賦活していなかった。この両者の違いは、中位の情報を与えられた被験者は、多く与えられた被験者と少なくしか与えられていない被験者と比較して、多く脳の部位が賦活していたことを表している。この違いは明確であった。しかしながら、これをもって、リターンが少ないことを裏付けているとは言えず、今後の課題を残しているとも考えられる。
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