研究概要 |
本研究は,地方公共団体(自治体)の業績評価における,相対的比較を可能とする非財務の評価情報の意義・課題に関する調査・分析を通じ,業績評価の設計における指標選択,目標値設定のあり方を明確にすることで,個々の自治体がより有効性の高い業績評価の仕組みを検討するうえで貢献すること,また自治体間の相対的業績比較の制度化が個別自治体の意思決定におよぼす影響を明らかにすることで,社会的な制度設計の検討に貢献することを主たる目的としている。 調査研究の1年目に当たる当該年度では,行政サービスの領域や性質によって,(1)どのような評価指標の選択,評価方法が実践されているかを明らかにすること,(2)イギリスやアメリカで導入されている共通指標による相対比較の実践内容およびその意義,課題を明らかにすることを主な目的とし,以下の取り組みを実施し研究成果を得た。 (1)関連テーマに関する追加的な国内外の文献調査に基づき,研究準備段階の平成21年度において試行的に実施した,7自治体(川崎市,横浜市,名古屋市,京都市,大阪市,神戸市,福岡市)を対象としたインタビュー調査をふまえ,補足的な調査を実施し,多様な業績管理実務の実態を明らかにすることができた。 (2)(1)をふまえ,我が国における相対的業績評価の取組み経験を有する,総合研究開発機構(NIRA),NPOぐんま,茨城県龍ヶ崎市,山形市,八尾市,町田市の担当者に対する調査を実施した。法的制度のもとで実施されない相対評価は,多様な情報を提供できるというメリットをもつ一方で,継続性,網羅性,意思決定有用性など様々な点で課題をもつことを明らかにすることができ,相対的評価システムの有用性を検討するうえでの変数を整理できた。 (3)試行段階において使用した質問票調査のデザインについて,同様の調査の実施経験を持つ,Zaragoza大学Vicente Pina教授の指導を受け,質問票のデザインを改良することができた。
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