研究概要 |
本年度の研究は,将来情報の一つである中期経営計画情報に焦点を当て,当該情報の作成に関する実態をアンケート調査により明らかにするとともに,これを自発的に開示している企業の特性を実証的に明らかにすることを試みている。アンケート調査は,2,133社にアンケート用紙を送付し,最終的に375社(17.61%)より回答があった。 まず一つ目の成果として,管理会計情報としての側面が強かった中期経営計画の外部報告への利用という側面に注目し,アンケート調査により情報作成者の実態を明らかにしていることである。この調査により,アンケート回答企業の内,当該情報を策定している企業の過半数が投資家への説明資料と位置付け,開示していることを明らかにした。 二つ目の成果として,中期経営計画を自発的に開示している企業の特性を分析した。この分析を通じ,第一に,開示企業は非開示企業に比べて企業規模が大きく,社外取締役比率が高いということを明らかにした。すなわち,企業の自発的開示行動に関しては,コーポレート・ガバナンスの要素が影響していることを指摘した。第二に,中期経営計画情報を投資家向け説明資料と位置付ける企業は,そうでない開示企業に比べ利益の質が高いことを明らかにした、第三に,定量情報である財務目標を含めて開示する企業は,非開示企業に比べて利益の質,企業規模,外国人持株比率,社外取締役比率の高さで有意な差が認められることを明らかにした。
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