研究課題/領域番号 |
22530491
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉田 栄介 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (20330227)
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キーワード | テンション・マネジメント / 原価企画 / 業績管理 / マネジメント・コントロール / 事例研究 / 郵送質問票調査 / 診断的コントロール / インターラクティブ・コントロール |
研究概要 |
研究の全体構想は,テンション・マネジメントとしての管理会計という新たな視座に立ち,管理会計の機能・役割を解明することにあった。より具体的な目的は,第1にダイナミック・テンションの創造における各管理会計技法の役割を探究することであり,第2にテンション・マネジメントとしての管理会計の機能・役割を,特に「業務目標設定」と「コントロール・モード」に焦点を当て実証的に探究することであった。 3年計画の2年目である本年度は,1年目の研究が予定より早く進展したために,論文執筆,追加的なフィールド調査,郵送質問票調査データに基づく実証的分析を中心に研究を進めた。 第1の研究目的を果たすためのフィールド調査は,1年目よりトヨタ自動車について深く実施してきたため,比較対象として他の自動車メーカーを中心に実施した。その調査結果を中心に公表した論文は,テンション・マネジメントとしての原価企画の役割期待について初めて経験的・記述的に書かれた事例研究であり,管理会計研究界全般に対して,新たな管理会計の機能としてテンション・マネジメントの視座の重要性を強調した。 加えて第2の研究目的を果たすために,原価企画と業績管理を対象に業績目標水準とコントロール・モードと成果との関係を実証的に探究し,論文として公表した。分析の結果,第1に製造業での原価企画においてある程度の挑戦的目標原価が有効であること,第2に業種を問わず原価企画における部門間協働が有効であること,第3に業種を問わずインターラクティブ・コントロールも診断的コントロールも業績目標の達成に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初研究目的は大きく2つに大別される。第1の目的「ダイナミック・テンションの創造における各管理会計技法の役割の探究」について,当初の計画通り事例研究が進展している。年度終盤において新たな着想があり,それまで事例研究について当初の計画以上に調査が進展していたため,そうした時間的余裕を利用し当該年度の予算を一部繰り越し追加的に企業調査を実施した。 第2の目的「テンション・マネジメントとしての管理会計(業務目標設定とコントロール・モードに焦点)の機能に関する実証的探究」については,当初の計画より時間的には早く進展している。すでに郵送質問票調査を終え,データ分析に取り組んだ。その結果,必ずしも全ての仮説が支持されたわけではないが,当初から研究テーマの特性として探索的研究であり,分析結果からた新たな着想を得たいと考えている。 以上を総合すると,研究の進捗としては順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りもしくはそれよりも早く研究が進展しており,今後は次の2つの方向で研究を推進する予定である。ひとつはこれまでに得られた調査・分析結果と新着想を十分に生かすための追加的調査・分析,もうひとつは当初計画通り他の学術分野を含めた海外研究者との交流を通じて理論的水準を高めていくつもりである。
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