研究の全体構想は,テンション・マネジメントとしての管理会計という新たな視座に立ち,管理会計の機能・役割を解明することにあった。具体的には,第1にテンション・マネジメントとしての管理会計の役割・機能の探究と,実証研究に向けた仮説強化のため,トヨタ自動車㈱の事例研究を実施した。その結果,会議体を通じたマイルストーン管理体制の整備や,CCC21(Construction of Cost Competitiveness for the 21st century)でのサプライヤー企業との協働,VI(Value Innovation)での社内・社外ベンチマーキングの強化が,テンション・マネジメントのために重要な「インターラクティブ・ネットワーク」として機能していたことを発見した。 第2にテンション・マネジメントとしての管理会計の機能・役割を,特に「業務目標設定」と「コントロール・モード」に焦点を当て,実証的に明らかにすることを意図した。分析のためのデータは,2009年1月に東証一部上場製造業(有効回答151社,回収率17.7%)と,2009年5月に東証一部上場非製造業(同127社,同14.8%)を対象に実施した郵送質問票調査により収集した。高業績グループと低業績グループ間の差異の分析の結果,(1)製造業での原価企画においてある程度の挑戦的目標原価が有効であること,(2)業種を問わず原価企画における部門間協働が有効であること,(3)業種を問わず診断的コントロールもインターラクティブ・コントロールも業績目標の達成に有効であることなどが示唆された。
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