本研究課題の最終年度となる平成24年度では、昨年度より引き続いてXBRL形式の財務データの収集・蓄積を進めるとともに、財務情報の分布特性の調査をおこなった。また本年度データについても、全上場企業の財務数値についての分布の調査をおこなうとともに、同じく全上場企業の財務諸表に公開された全ての財務数値の1桁目の数字および2桁目の数字の出現頻度についても調査をおこなった。 3年間の研究期間において、企業規模、当期純利益、売上高など特定の数値に関しては、両対数分布において概ねマイナス1の角度を持つ分布、すなわち冪乗則に従う分布を持つことが明らかになった。またこの分布は必ずしも綺麗な直線ではなく、途中でゆるやかに折れ曲がる上に凸の曲線であることも判明した。折れ曲がるという結果については当初予想された分布とは異なっているため、今後の課題として更なる調査の必要性が明らかになった。 この他に、財務数値の最上位1桁目の数字の出現頻度と2桁目の数字の出現頻度の分布を調べた結果については、冪乗則のひとつである「ベンフォードの法則」の理論値どおりの結果が得られた。上位2桁目までの数字を取ると、10、20、30、…という切りの良い数字において頻度が突出し理論値通りの結果とはならなかったが、これは表示精度(多くの企業は百万円)の問題で数字が丸められてしまっていることに起因するものであり、丸められた数字を補正した上で出現頻度を見ると、ほぼ理論値通りの分布が得られた。データを扱う上で、表示精度の問題が結果に大きな影響を与えうることも判明した。 なお本研究を遂行するために開発したXBRL財務データ用ツールについては、研究成果の一部として、研究代表者のWebサイト(http://mslab.i.hosei.ac.jp/)上で公開することになっている。
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