研究課題/領域番号 |
22530502
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
記虎 優子 同志社女子大学, 現代社会学部, 准教授 (50369675)
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キーワード | 企業の情報開示 / コーポレート・ガバナンス / 記述情報 / 叙述情報 / 内部統制システム / 会社法 / 基本方針 / テキストマイニング |
研究概要 |
日本では、コーポレート・ガバナンスに関連する情報開示が近年制度化されるに至っており、各企業がコーポレート・ガバナンスについてどのように考えているのかを具体的に知ることのできる環境がすでに整っている。本研究の目的は、この種の開示情報を利用して、各企業の具体的な開示内容を分析することにより、コーポレート・ガバナンスに対する各企業の考え方を追究し、コーポレート・ガバナンスの枠組みにおいて企業の情報開示行動を分析することである。 本年度には、コーポレート・ガバナンスに対する各企業の考え方を追究するために、コーポレート・ガバナンスに関連する情報開示の中でも、特に会社法に基づく内部統制システム構築の基本方針(以下、基本方針)についての適時開示資料に着目して開示実態調査を行った。基本方針として開示されている情報は、いわゆる記述(叙述)情報であり、定量分析に利用することが困難であるために、実証的研究においてこの種の開示情報を利用することは進んでいない。しかし、この種の開示情報を企業の情報開示行動に関する研究に利用すれば、新たな知見を得る可能性がある。そこで、開示実態調査に際しては、調査結果を定量分析に利用することができるように、各企業の基本方針についての適時開示資料の中から、本研究が関心を持つ開示項目ごとに、開示されている情報を、通常用いられている日本語で記述されている文章で構成されているテキスト型データ(textual data)として収集した。 現在、開示実態調査の結果得られたテキスト型データに対して、テキスト型データに対する定量分析の手法であるテキストマイニングを行うことにより、各企業の具体的な開示内容の分析を進めている。今後はさらに分析を進めて、各企業の開示内容の特徴を捉えて、各企業の開示内容の特徴をもとにコーポレート・ガバナンスに対する各企業の考え方を追究することを試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開示実態調査に際しては、各企業の会社法に基づく内部統制システム構築の基本方針(以下、基本方針)についての適時開示資料の中から、本研究が関心を持つ開示項目ごとに、開示されている情報をテキスト型データ(textual data)として収集した。現行の制度的環境では、基本方針についての適時開示資料をXBRL形式などの容易に加工可能なデータ形式で入手することができないため、テキスト型データの収集に当たっては、膨大な数の適時開示資料を入手した上で、各適時開示資料について、具体的な開示内容である文字テキスト情報を、本研究が関心を持つ開示項目ごとに手作業でピックアップして整理・加工しなければならず、大変な手間がかかった。しかし、手間を惜しまず取り組んだ結果、開示実態調査を完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では当初、会社法に基づく内部等システム構築の基本方針(以下、基本方針)についての開示内容から、コーポレート・ガバナンスに対する各企業の考え方を捉えて、基本方針についての開示とは別の、企業の情報開示行動との関係を解明することを意図していた。しかし、本年度に実施した研究の過程で、基本方針として適時開示された具体的な開示内容の分析そのものから、内部統制システムの構築に対する企業の意識や対応を解明できる見込みが大きいことが判明した。これに加えて、基本方針についての適時開示資料の中で具体的に何を開示するのかも、コーポレート・ガバナンスの枠組みにおける企業の情報開示行動のひとつである。そこで、今後は、この種の企業の情報開示行動に焦点を当てて、さらに詳しく分析することにした。これにより、具体的な開示内容の分析を通じて、企業が内部統制システムの構築に対してどのように臨んできたのかを解明することができると期待される。
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