研究概要 |
本研究は,会計基準の国際的なコンバージェンスを前提として,会計基準,会計実務,市場システム(法制度・会社制度)を対象に,1990年代に生成した公正価値会計の意義を再評価し,公正価値会計の将来的な展開の可能性を実証的かつ理論的に検討することを目的とするものである。この研究目的に照らして、平成23年度は、中国における公正価値会計の適用状況について趙彦峰他『公正価値会計研究』(経済科学出版社、2010)に基づいて文献的研究を行なうとともに、規模別会計基準の設定で先行している中国小企業会計準則の日本語への翻訳を行った。また、平成23年11月26日に日中韓国際会議を開催し、中国の東北財経大学および韓国の啓明大学から研究者を招へいし、両国における新会計基準の導入状況について、シンポジウムを開催した。さらに、平成24年1月に上海証券取引所において中国における公正価値会計の適用状況に関する聞き取り調査を行った。中国の経済状況や上場企業の8割が製造業であることを考えるとIFRSのアドプションはあり得ず、会計基準が法律となっていることからも立法権を放棄することになるので引き続きコンバージェンスを行う方針であることがわかった。また、コモンコントロールが一般的であるので企業結合における持分プーリング法の堅持、中国国営企業を保護する観点から関連当事者間取引の開示範囲の限定、市場が未成熟な状態にあるため賃貸用投資不動産の公正価値評価の回避など、重要な部分でカーブアウトしていることが判明した。このようなことを考えると日本はIFRSについて必要な会社が任意適用で、業種別規模別のニーズにあった会計基準を策定することが本来の会計基準の在り方ではないかと考えるに至った。上海の中欧工商管理学院(China Europe International Business School)では本研究の一部として経営者による予測情報の意義について研究報告を行った。
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