本年度は研究活動の初年度であり、研究代表者と分担者が、日本国内の地方公営企業の経営や会計の現状を垣間見ることで論点の整理を行った。地方公営企業の経営状況(損益の状況)については、下水道事業、病院事業、交通事業などで多額の赤字や累積損失が認識されている。病院経営の悪化は、住民の生命をも脅かす非常に深刻な問題となっている。交通事業の赤字もまた、相対的に非常に大きなものとなっており、自治体の行政経営においては、病院事業や交通事業の赤字は、非常に重要な克服すべき問題となっている。しかしながら、下水道事業の問題は、ほぼすべての地方自治体が直面している火急の課題として位置づけられ、この問題の解決こそが、地方公営企業の経営の健全化では最も重要となる問題である。 本研究では今年度、下水道事業の経営健全化を実現するためには、その赤字の原因を明確に解明するために、下水道事業会計に企業会計方式を導入することが重要であると思考している(下水道事業への地方公営企業方の適用の問題)。そしてさらに、下水道事業は上水道事業と経営統合を図ることで、管理経費の抜本的な削減化が可能になるのではないかという問題提起も行うに至っている。加えて、地方公共団体間の上下水道事業の広域化は、上下水道事業の安定した経営に寄与する経営形態であり、この経営形態に適した会計方式とはいかなるものかを検討することが、次年度以降の本研究の課題である。その際、水道事業団などで実践されている会計方式を吟味することも、本研究課題の大切な研究テーマとなる。
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