平成22年度の研究実績は、2003年にドイツ政府が打ち出した「企業の誠実性と投資家保護の強化のための10項目プログラム」の立法政策を仔細に検討し、会社法制重視の資本市場法規制のドイツの特徴を分析的に究明し、国際的資本市場の規制ルールとしての国際的な会計基準のIAS/IFRSの国内法化のための立法過程研究を進め、資本市場指向のIAS/IFRS準拠の連結決算書と非資本市場指向のHGB準拠の連結決算書、IAS/IFRSとHGB準拠の個別決算書の作成基準の比較研究を行い、HGB準拠の個別決算書の計算規範に関する「ドイツ問題」を重点的に摘出したことである。そして、会社法(株式法)の資本維持・債権者保護重視の配当規制条項、法人税法の商法決算依存条項の現行の配当・税計算テストに関する理論的サーベーを実施した。 平成22年度の研究の成果としては、IAS/IFRS準拠の個別決算を前提とした場合に、税計算テストが現行のHGB準拠主義から離脱していく可能性について、ケルン大学教授の独立税務会計説を研究し、『会計』(森山書店)誌に「IAS/IFRSと税務上の利益計算」と題する論文を発表した。さらに、IAS/IFRS準拠性をエンフォースするドイツのシステムに関する論文を『企業会計』(中央経済社)に発表した。
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