本研究では、リスクとは何であり、リスクがどのように生み出されどう分配されているのか、とくに今後、われわれはリスクとどのように向き合い、対応していけばよいのか、を明確にするために、リスク社会の捉え方およびリスクに対応できる社会をめざしてなすべき課題を、ソリューション研究の視点から考察を加えた。リスクに対応できる社会づくりのためには、 (1)現実社会に存在する各種のリスクを網羅的に把握して、それらを測定する必要があり、そのためのリスク指標の体系化が必要であること、 (2)リスクリテラシーを酒養する必要があること、すなわちリスクに関する理解を深めることにより、不確実性への対処能力を高めること、 (3)また、リスクマネジメントの手続きとしては、リスク指標によってリスクを測定し(リスク識別)、そのリスクについて、発生確率(possibility)と影響度(厳しさ、severity)の観点から評価し、両者の積を評価尺度として試算する(リスク評価)とともに、こうしたリスクを最小限に抑える手立てを講じる(リスク対応)こと、 (4)最後に、リスクへの対応について合意形成を図るために、関係者間で安全対策に対する認識や協力関係の共有がスムーズになされるよう、リスクコミュニケーションが必要とされること、の四点を指摘した。要するに、リスクに対応できる社会づくりのためには、リスク指標の体系化と測定、リスクリテラシーの酒養、リスク管理の手続き、およびリスクコミュニケーションの各視点が重要であることを明確にした。
|