研究概要 |
本研究は,日本占領期ジャワにおける大政翼賛運動の形成・発展過程を,先行研究では十全には用いられていない映像もふくめた史資料によって分析することを目的としている.この目的を達成するため,平成22年度はオランダ国立戦争資料研究所とオランダ国立音声映像研究所にて,資料収集をおこなった. 前者では,ジャワ奉公会をはじめ,隣組,青年団,警防団など大政翼賛運動の一翼を担った組織,運動に関する一次史料を数多く発掘することができた.とくに,ジャワ全土で隣組制度が導入される以前に結成されていたバンドゥン市の隣組制度の概要を示す規定の入手は,本研究にとって大きな意義をもつと思われる.このほか,「極秘・昭和18年度治集団軍政一般会計歳入歳出予算」も発掘することができた.これによって,日本軍政初期の1943年における会計予算の全体像と,予算全体に占める大政翼賛運動に関係する費目の位置づけや金額などを数値化することが可能になる. 後者では,日本映画社および同社ジャカルタ製作所が製作した「大東亜ニュース」「南方報道」「ジャワニュース」,ジャワ映画公社が製作した「ジャワバル」をはじめとして,日本軍政当局が製作を指示し,ジャワ民衆の宣撫工作に用いられた映像を購入した.これらの映像は存在こそ知られているものの,先行研究では内容の詳細な分析にまではいたっていない.上述のように,本研究は先行研究では十全には用いられていない映像もふくめた史資料によって分析をこころみるものである.したがって,これらの映像資料は,日本軍政当局がどのようにして大政翼賛運動を鼓吹したかを分析するには,きわめて史料的価値のある一次史料といえる.平成22年度は史資料の収集と分析をおもに行ったため,論文・学会発表などの具体的な成果を残すことはできなかったが,23年度以降には積極的に学術誌への投稿,学会発表に務めたい.
|