ソローキンの文化社会学の特徴および背景について次の知見を得た。 (1) ソローキンの主著、とりわけ、『社会的・文化的動学』(全4巻、1937)の第1巻を検討し「文化心性」概念を明確にした。 (2)ソローキンの『今日の社会学諸理論』(1966)を検討することによって、パーソンズの「社会システム」・「文化システム」概念との差異を確認し、ソローキンの文化社会学の非分析的・総合的な特徴の一端を明らかにした。 (3)ロシア連邦、コミ共和国、スィクティフカルのソローキン研究センターへの調査旅行を実施し、とくにソローキン関係の書翰複写を収集し、ソローキンとパーソンズの確執、両者の学生であったマートンの微妙な態度、アメリカ社会学会会長選挙(1963年)をめぐる学会の政治的状況等、ソローキン文化社会学成立上の知識社会学的背景を書簡から把握することができた。 (4)ソローキンの誕生・育成の地、スィクティフカル郊外のコミ族居住のトゥリア村、 オネージェ村、ガム村を訪ね「ソローキン記念碑」を確認するとともに、ソローキンの思想・信条形成の一端に影響を与えたと思われるコミ文化の実情を観察した。
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