研究課題/領域番号 |
22530521
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 春吉 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70247807)
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キーワード | 多元主義 / 存在論 / 批判的社会理論 / 実在論 / 行為論 / M. ヴェーバー / K. マルクス / Critical Realism |
研究概要 |
今年度は、 1.Critical Realismに関する研究を進めた。これまでは、当学派の基本思想と方法を全般的に理解することを行ってきたが、この研究の中で、特にこの学派の理論の創始者であるR.Bhaskarの「批判的説明科学」という科学論的構想を支えるExplanatory Critiqueの方法、論理構造について、私の課題に照らして具体的研究課題として有望なテーマとなることを確認できた。この論理は、私が研究してきたマルクスの啓蒙主義批判と批判的社会存在論的の論理と類似しており、その異同について批判的に検討する課題が明らかになってきた。この点は、9月に京都自由大学で行った講義「啓蒙主義批判とマルクス主義」で簡単にふれたが、本格的研究はこれからである。 2.懸案になっているヴェーバーの理念型を多元主義的存在論の視点で読み解く作業を進めた。後半期はこの課題に集中的に取り組んだ。この構想自体は早くからその大筋は見えていたテーマであったが、ヴェーバーの複雑に錯綜し、相互に矛盾する議論を整理し、現今の研究や議論状況にコミットする形で論証する作業はかなり難渋し、関連する文献資料についても、これまでに未見だった新たな資料について検討する必要が生まれ、きわめて困難な作業となった。ようやく、あらためて論証の展望を得て、執筆に取り組み。ようやく、年度末に、原稿段階のものであるが、論文「M.ヴェーバーの理念型論と社会科学認識の「客観性」の意味-多元主義的実在論の視点からの再解釈の試み-」を完成させることができた。この論文は、当初の予想を超えて、400字原稿用紙300枚を超えている。現在、掲載方法も含め掲載誌について交渉の途上である。本研究を年度内の公表成果に結びつけられなかったが、次年度にこの成果を確実に公表できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開始年度は、追加採択であり、年度の仕事分担の関係でエフォート配分にアンバランスがあった。今年度は、かなり集中的に研究に取り組み、M.ヴェーバーの理念型論についての多元主義的存在論の視点からの新解釈について懸案の論文執筆に取り組み、難渋したが、結果的に大部の原稿を完成させることができた。しかし、年度内公表という目標が果たせなかった。次年度には、この成果が公表されることになる。その意味で研究は進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Critical Realism研究を進める。大学より、サバティカルの機会を得て、イギリスでの3ヶ月の学外研究を、ロンドン大学のR.Bhaskarのもとで行い。特に、Bhakarが提唱しているExplanatory Critiqueの方法と思想について研究を進める。このテーマで、年度内に論文を作成公表したいと考えている。 (2)本年度のM.ヴェーバー研究のなかで、これまで難解のためにほとんどその意味が理解されてこなかったとも言える「シュタムラー批判」論文が、多元主義的存在論の観点からみて、特別の重要性をもっていることが明白になった。今回の論文で扱い切れなかったので、これを明らかにすることを今年度の課題にする。公表論文の作成を目指す。
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