平成22年度の前半は、被爆問題関連図書や映像などの資料で現在入手可能なものを探し、できるかぎり入手した。すでに手元にある映像や資料とあわせて、研究目的である「被爆の記憶」の伝え方を検討するデータを充実させた。そのうえで、7月以降は、8月、11月と3回にわたって、広島へ出かけ、中国新聞、朝日新聞、中国新聞平和メディアセンターの記者そして語り部の一人から聞き取りを行った。年代として30代、50代の記者であり、彼らが被爆問題報道に携わった経緯や、そこでの印象深い経験、なぜ自分が今被爆問題報道に関わり続けているのか、現在の被爆問題報道の問題点などを中心として話をうかがった。聞き取りをボイスレコーダーで録音してあるが、研究上必要ということになれば書き起こし、分析に使用する予定である。また並行して原爆関連ドキュメンタリーにおいて被爆をめぐる表象がどのように語られ、説明されているのかを中心として映像の詳細な解読の試行を行った。この映像解読は今回の研究目的の中心であるが、平成23年の後半から本格的に実施する予定である。平成23年1月からは、記者聞き取りで明らかになった原爆関連新聞記事切り抜き(昭和34年から現在にいたるまでのもの)の閲覧とデジカメによる接写作業に集中している。朝日新聞広島総局に保存されているものであり、これまで分析に使われたことはなく、貴重な資料といえる。この作業は平成23年8月に完了させる予定であり、今年度分の記事閲覧接写作業計画は予定通り、実施した。
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