研究課題/領域番号 |
22530528
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
好井 裕明 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60191540)
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キーワード | 被爆問題 / エスノメソドロジー / 映像の社会学 / 啓発 / 人権・平和 |
研究概要 |
平成23年度は22年度より開始していた原爆問題関連記事の閲覧とデジカメによる接写作業を続行した。5月、6月、7月と3回にわたり、朝日新聞広島総局にスクラップされている記事を閲覧し接写して電子資料として使用可能な状態とした。昭和34年度からのスクラップ記事を平成10年度まで収集したが、この時点で総枚数は15000枚を超えている。 この作業を続行しよう考えていたが、並行して被爆ドキュメンタリーの映像とナレーションの関連等を解読するために、エスノメソドロジー的な書き起こし作業を進めるために、一時中断した。被爆ドキュメンタリーの書き起こし作業は、NHKが試行していた映像の学術利用の研究助成である「NHKアーカイブストライアル」の第三期を活用できると考え、目的を詳細に記した書類を申請していたのだが、無事、採択された。そのため、平成23年9月から平成24年3月の半年間は、被爆ドキュメンタリーの書き起こし作業に集中した。この期間、本務校での教育や会議等雑務の合間をぬい、ドキュメンタリーの内容や放送時期などを考慮しながら、18本の被爆ドキュメンタリーのエスノメソドロジー的な書き起こしを完了させた。 並行して、9月に松山大学に所蔵の被爆資料を閲覧し、関連文献を入手し、11月には広島平和記念資料館に出かけ、その時期に特別展示されていた被爆者の資料等を閲覧した。 また6月18日に開催された関東社会学会大会(明治大学)では、テーマセッション(1)「戦争体験の世代間継承:被爆の記憶と戦争体験の継承」で被爆ドキュメンタリーの解読の中間成果として「「被爆の記憶」の語り方を解読する」を研究報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の中心である被爆ドキュメンタリーという映像を詳細に解読するために必須である、ドキュメンタリーのエスノメソドロジー的な書き起こし作業をNHKアーカイブスの学術利用をもとにして、当初の予定通り、18本も進めることができた。今後はすでに手元にある他の映像も書き起こし作業を進め、さらなる解読が可能になっているとともに、完成年度である平成24年度末には、少なくとも、解読論文とともに被爆ドキュメンタリー映像を資料化したものを報告書におさめるメドがたっている。
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今後の研究の推進方策 |
調査研究上に特に大きな変更点はないが、広島での被爆問題担当記者への聞き取りの過程で明らかになった昭和34年から現在までの被爆問題、核問題、原発問題関連記事のデジカメ接写による資料化作業は、大変重要なものであり、平成24年度には必ずその作業を完了させる予定である。この新聞記事言説は最終的には20000枚を超える膨大なものであり、とうてい本科研の研究期間である平成24年度までで詳細な分析は完了することはできない。まずは映像における「被爆の記憶」の伝え方の解読に集中するが、本科研のさらなる展開として、平成25年度から遂行できるような新たな科研を平成24年度には申請したいと考えている。その場合、広島の被爆だけでなく、長崎の被爆の記憶の伝え方もまた、分析の射程となる予定である。
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