研究課題
平成22年度は、日本および中国で意識調査を行い、また、日本のメディア(新聞、インターネットのフォーラム)での報道、議論の内容分析を行い、得られた知見をカナダ、日本、中国、ドイツの学会(国際会議)で発表し、さらに、いくつかの国際会議の論文集等で発表した。調査・内容分析で得られた主たる知見は以下のとおりである。(1)日本人(調査対象者)は、「世間=運命論」とでもよぶべき価値観、ものの見方を共有している。これは仲田が過去15年以上にわたって実施してきた調査・研究の知見と一致する。(2)この「世間=運命論」は、日本人のプライバシー観、インターネット観(いわゆるCMCやブログ利用に関する意識)、科学・技術観(ロボット観を含む)などを規定している。3)「世間=運命論」は、日本人の企業倫理のありかたとも連動している。「世間=運命論」は、「運命観」、「天譴論(天がこらしめのために災害を引き起こすという論、関東大震災発生後の日本社会で天譴論がとなえられた)」、「清貧の思想(人間は豊かになりすぎると堕落するものだという精神論)」、「科学万能を否定する考え」、「相互扶助の大事さ」等々といった、いわば伝統的、非合理的な考え方だが、これが企業倫理と連動するのはきわめて興味深い。おそらく、「世間=運命論」の中に、ある種の存在論的ものの見方、「徳」に関する意識がひろく含まれていて、これが日本人の基盤にある価値観、ものの見方と共鳴するのではないかということが想像される。(3)中国の人たちも、「日本的」あるいは「東洋的」価値観を日本人と共有している。(4)しかし、日本人と中国人では対人関係のありかた、友人関係のありかたたがかなり違う。たとえば、中国人の場合、友人関係は日本人と違い、「近さ」の関係しかない(と彼らは考えている)。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Cultural Attitudes towards Technology and Communication 2010.
巻: 2010version ページ: 300-315
中国信息倫理国際会議発表論文集
巻: 2010version ページ: 32-67
CAJS Monograph
巻: 1 ページ: 33-53
巻: 1 ページ: 7-31
地域研究(筑波大学)
巻: 32 ページ: 59-81