研究概要 |
本研究は大規模パネル調査および横断的調査データを用いて,わが国における同棲の動向と社会経済的特徴を検討し,さらに同棲経験者のパートナー関係の比較分析を通して顕現される日本のライフコースとカップル・夫婦像の変容をとらえることを目的とする.本年度は(1)わが国における同棲の実態を把握するとともに同棲経験者の社会経済的属性を比較分析し,(2)同棲を経験した夫婦のパートナー・家族関係の分析を行った.使用したデータは,東京大学社会科学研究所が2007年より実施しているパネル調査(2007年~2011年)「働き方とライフスタイルに関する全国調査」と明治安田生活福祉研究所の「第3回結婚・出産に関する調査2007」である.これらデータを用いて統計的分析を行い,先行研究の知見の再検討とともに本データから新たに見出された知見を検討した.分析の結果,先行研究の知見に見られるように,同棲経験者は同棲未経験者にくらべ低い社会経済的属性(学歴・収入等)を持つ傾向が見られるものの,年齢・性別等によりその傾向に違いが見られることが明らかとなり,わが国においても,多様な人々によって同棲が経験されていることが示唆された.また,同棲経験者のパートナー関係については,同棲経験の家事分担に対する影響に関して分析を行った.先行研究では同棲経験を持つ夫婦は同棲経験のない夫婦にくらべ家事分担が平等的であることが示されているが,分析結果からは,同棲経験者のライフコース上の同棲経験の位置づけにより,同棲経験の家事分担への影響が異なることが示唆された.これら知見をまとめた中間成果物は,国内学会(日本家族社会学会大会)・国際学会(American Soclological Association Annual Meeting)等において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度より本格的なデータ分析を開始したが,本研究で使用するデータは順調に確保できている.計画段階においてはサンプル中の同棲経験者の人数の不足から回帰分析等の分析手法が使用できないことも懸念されたが,社研パネル調査においてもWave5データ(2011年)において,これら分析に最低限のサンプル数は確保できる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,最終年度に当たるため,分析をさらに進めるとともに,国内学会・国際学会において研究成果を広く発表し,そこで得られた批判を基に,分析結果の再検討を行った上で,論文の作成を行う.
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