成人年令を18歳に引き下げることの是非が検討されている中、未成年者が飲酒、喫煙をするかどうかの「合理的な意思決定」の過程を解明することは極めて重要である。拡大抑止理論(extended deterrence theory)は、違法行為に対する社会的制裁や個人が自分自身に課す制裁の程度が高いほど人は違反行為を犯さないという「合理的意思決定」を下すと提唱しているが、近年、法令順守行為に対する報酬も有効な抑止要因であると指摘されるなど、「合理的な意思決定」の過程においてどのような要因がどのように作用しているかについてはいまだ十分解明されていない。本研究では、未成年者が飲酒、喫煙をするかどうかの「合理的意思決定」の過程において社会的制裁と個人が自分自身に課す制裁、そして、社会的報酬と個人が自分自身に与える報酬が抑止要因、または、動機づけとして作用していると推定し、研究を進めた。 拡大抑止理論と分化的強化(differential reinforcement)に関する先行文献や米国在住の有識者からの助言をもとに、(1)友だちや家族など、自分にとって大切な他者(significant others)から尊敬の念を失うことを「社会的制裁」、(2)自責の念や良心の呵責に苛まれることを「個人が自分自身に課す制裁」、(3)友だちや家族など、自分にとって大切な他者から称賛されることを「社会的報酬」、(4)自尊心や自分自身を誇りに思う気持ちが高まることを「個人が自分自身に与える報酬」と定義し、これらを測定するための質問項目を作成した。また、データ入力の際必要となるコードブックも作成した。上記4つの要因が、それぞれ、飲酒、喫煙をすること、そして、飲酒、喫煙をしないことに対して抑止効果、または、動機付けとして作用しているという仮説を立て、その仮説を実証するためのアンケート調査の準備を進めている。
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