研究課題/領域番号 |
22530539
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
笹原 恵 静岡大学, 情報学部, 教授 (40237813)
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キーワード | 派遣労働者 / 労働組合 / 非正規労働者 / JMIU / 偽装請負 / 光洋シーリングテクノ / 労働運動 |
研究概要 |
本研究は派遣労働者の組合運動への参加および労働組合側の派遣労働者を含む非正規労働者の組織化戦略を調査分析することを通し、今日の労働組合運動のあり方を分析しようとするものである。 2011年度は、光洋シーリングテクノ(徳島)における派遣労働者の組織化に焦点をあて、引き続き、資料収集を行うとともに、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)徳島地域本部(以下、徳島地本と略)および光洋シーリングテクノ(以下、光洋STと略)関連支部においてヒアリング調査を行った。明らかになったのは下記の点である。(1)光洋STの労働組合は、多数派として連合傘下のJAM(ものづくり産業労働組合)が、少数派として全労連傘下のJMIUが存在しているが、いずれの組合もいわゆる「正社員型」であり、積極的に派遣労働者らを組織化したわけではなかった。むしろ派遣労働者自らが、偽装請負の問題点を進んで告発し、組合に結集しようとする際に、JMIUを選んだのであり、「JMIU光洋ST関連支部」を立ち上げている。(2)JMIU徳島地本は、派遣会社との交渉を考慮し、地本の下に「JMIU光洋ST関連支部」を置き、また派遣元会社別に「○○分会」「○○分会」という形で派遣労働者らを組織化した。なお、派遣労働者らのヒアリングによれば、(3)彼らは偽装請負を告発し、正社員化をめざすとともに、会社側に対し品質改善についても積極的な働きかけを行っており、その点においては必ずしも品質改善に前向きな態度を示してこなかった(と思われる)正社員型の労組の姿勢について懐疑的な立場をとっている。その意味で、派遣労働者らの主張は、生産性向上、コストダウンを最優先する企業(資本)への異議申し立てであると同時に、正社員型の労働運動についての根本的な異議申し立てとも言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、労働組合と非正規労働者との相互作用に焦点をあて立体的に分析しようとするものであり、本研究期間には、ナショナルセクターレベルから個別労組レベル、労働者個人レベルの3つのレベルにおいて、JAMとJMIU傘下の労組についての調査分析を行っている。現時点においては、特にJMIU傘下の派遣労働者を組織化している個別組合の動向についての調査研究を進めており、おおむね順調な進度といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在進めている「JMIU光洋ST関連支部」についての調査研究をすすめるとともに、JAM、またその傘下の支部においてもヒアリング調査をすすめ、比較研究を行うことによって、ナショナルセクターレベルの運動方針あるいは運動の進め方の差異を分析することにしたい。当初は、ナショナルセクター、個別労組、労働者個人レベルの順に、全国レベルから個人レベルへと分析を進める予定であったが、逆方向、つまり労働者個人から個別労組レベル、そしてナショナルセクターレベルと、いわば個人から全体を見上げるような形で分析を進めていきたいと考えている。
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