本研究の目的は、世界各地の大都市における都市・社会政策と貧困・移民層の居住分布、住民生活、支援団体の比較をつうじて、福祉レジームの違いによって大都市の貧困・社会的排除やセグリゲーションの違い、貧困・移民層の社会的処遇のあり方を明らかにすることである。 実施計画は以下の5つの軸から構成されており、昨年度は比較研究の軸となる二つの都市、大阪市とパリ市を中心に研究を進めた。 1 対象地域の都市政策の概要を把握するため、関連資料の収集・分析。平成22年度は大阪とパリで資料収集と行政職員への調査を実施した。今年度は引き続きアジアやアメリカ地域の大都市に対象を広げる予定である。 2 対象都市の社会構成を把握するために、小地域統計データの収集、GISを用いた社会地図の作成、セグリゲーション指標の分析。平成22年度は、大阪市の社会地図作成とセグリゲーション分析を行った。またパリ市のデータを入手し、分析に着手した。本研究で軸となる大阪とパリの二都市の比較が可能となった。 3 地区住民の生活史調査に関しては、平成22年の段階で、大阪市の西成区と生野区で計44名を対象に本調査を実施。量的・質的水準においても当初計画以上のデータが収集できた。今年度はさらにデータの詳細な分析を行う。 4 地域住民組織の役割については、昨年度は日本では大阪市を中心に地域団体からの資料収集と聞き取り調査を実施。またパリ市の貧困地区では行政職員からの聞き取りと地域団体の活動を調査し、本調査の調査環境の構築が可能になった。今年度はさらにパリ市の地域団体の詳細な聞きとり調査と住民インタビューの調査環境構築を行う予定である。またアジアとアメリカの住民組織に関しても引き続き情報収集に努める。 5 国際研究ネットワークの構築については、フランスの研究者およびパリ市都市政策担当職員とのネットワークを拡大することができた。平成22年度はサンパウロ大学の研究者とのネットワークを構築し、ブラジルにおける調査環境構築の手がかりをつかんだ。
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