研究課題/領域番号 |
22530548
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
諸岡 了介 島根大学, 教育学部, 准教授 (90466516)
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研究分担者 |
桐原 健真 東北大学, 文学研究科, 助教 (70396414)
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キーワード | 死生観 / 終末期医療 / 医療・福祉 / 地域社会 |
研究概要 |
本共同研究は、現代日本の終末期医療における在宅介護の傾向や看取りを支える関係性の喪失といった諸問題をふまえ、死生をめぐる人々の意識や価値観の実際を、調査票調査・インタビュー調査・思想史的考察によった多角的な視座から明らかにすることを目的としている。 平成23年度の研究実績としては、本共同研究の中心ともいえる調査票調査の実施・集計を進めることができたのがもっとも重要な成果である。この調査票調査は、在宅ホスピス利用者の遺族を対象としたもので、この領域では全国最大級の調査である。この調査からは、界在の在宅ホスピスにおける(1)家族介護の実態、(2)告知のありかたの実態、(3)病院・在宅間の移行を左右する諸要因、(3)地域社会における死生観の実際といった主題について新たな知見を得ることができた。これらの知見については医療現場との共催である「タナトロジー研究会」において発表を行った。平成24年度にはこれら現在の「看取りの文化」の実際に関する知見に詳しい分析をかけ、より広い文脈に位置づけながら、広く社会に発信していくことが課題となる。 また、これらの調査の遂行に付随して、この領域における今後の調査研究の進展に与するべく、在宅ホスピスを調査する際の方法論やそのフィールドとしての特質に関して整理を行った。 さらに、これらの調査研究に加えて、思想史的・宗教史的な考察もまた進められた。とりわけ、現代日本にみられる死生観や「看取りの文化」の歴史的背景について、近世に遡りうる要因と近代以降に新たに現れたとおぼしき要因が整理され、あらためて現代社会の医療化傾向の中にあって仏教思想や民俗信仰が一般市民に与えてきた影響について思想史的な分析がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本共同研究の中心ともいえる調査票調査を実施し、集計までを行うことができた。この調査票調査は、在宅ホスピス利用者の遺族を対象としたもので、この領域では全国最大級の調査である。また、宗教史的・思想史的考察についても順調に進められた。ただし、計画に含まれていたインタビュー調査には震災の影響で遅れが出た部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、平成23年度までに本共同研究の中心ともいえる調査票調査の実施・集計を行うことができたので、今後その成果を広く世に問い議論を深めていくとともに、それを社会学的・思想史的・宗教学的な文脈に位置づけることが今後為すべき作業となる。具体的には、現在の在宅ホスピスにおける(1)家族介護の実態、(2)告知のありかたの実態、(3)病院・在宅間の移行を左右する諸要因、(3)死生観の実際といった点につき、上記調査票調査の結果をもって他地域との差異や共通点を確かめつつ、「看取りの文化」の見直しを進める中で、在宅ホスピス実践をはじめとするこれからの社会実践に活かしうるかたちに研究を進めていく。
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