研究課題/領域番号 |
22530552
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
奥田 憲昭 大分大学, 経済学部, 教授 (60123585)
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キーワード | 瀬戸大橋 / 島 / 高速道路 / 生活圏 / 環境問題 / 地域コミュニティ / 神社 / 氏子 |
研究概要 |
瀬戸大橋の開通から20年以上の歳月が経過した。この間瀬戸大橋は、香川県側の諸都市、とりわけ架橋のまちとなった坂出市や周辺町村に多大な影響を与えてきた。その影響は、(1)都市圏の変化、(2)住民生活と地域コミュニティの変容、(3)まちづくりの変化として現れている。本研究は、研究代表者が23年前にまとめた調査研究(『現代地方都市論-海橋のまち坂出市と住民生活-』恒星社厚:生閣1989)と比較することにより、20数年間の変化を明らかにすることを目的としている。1年目の昨年度は、統計調査から都市圏の変化を明らかにし、その原因について考察した。2年目の今年度は、自治会長のヒアリングとアンケート調査に基づき住民生活と地域コミュニティの変容と自動車騒音を中心とする環境問題を明らかにすることを目的とした。 前回の調査においては、島嶼部と陸上部の建設段階における地域住民の対応(政治過程)を環境問題を中心に取り上げた。今年度の自治会長のヒアリングとアンケート調査においては、(1)この20数年間に架橋や高速道路・インターチェンジの敷設によって生活(就業・通勤・買い物・通院)や環境問題にどのような影響があったか、(2)近隣関係やコミュニティ活動にどのような変化が生じたか、(3)介護問題を中心とした現在の生活課題にどのように対処しているか、といった問題を取り上げた。島嶼部においてはまず自治会長のヒアリング調査を実施した。このヒアリング調査において島嶼部においては調査前の予想をはるかに超える大きな変化が生じていることが明らかになった。瀬戸大橋は与島・岩黒島・櫃石島といった塩飽3島が橋脚となったが、このうち瀬戸大橋自動車のPAが設置された与島では、著しい人口減少と高齢化が進行していることが明らかになった。こうしたことから島嶼部においてはヒアリング調査をする以前に、塩飽3島の人口変化の実態とその原因を考察しておく必要が生じ、国勢調査や自治会長から得た情報を基に「瀬戸大橋と塩飽3島の人口変化に関する考察」としてまとめた。 今年度予定していた地域コミュニティ調査は、前回調査で取り上げた陸上部の西部地区と川津地区で実施した。西部地区は瀬戸中央自動車道に近接する住宅地であり、川津地区は瀬戸中央自動車道の坂出IC周辺地区と瀬戸中央自動車道と連結した高松自動車道周辺地区である。前者の西部地区は著しい高齢化が進んでおり、後者の川津地区は坂出市に郊外地区として宅地化が進んでいる。調査回収率は、西部地区79.1%、川津地区41.9%となっている。調査結果の詳細は、論文としてまとめるが、全体として西部地区においては、かつて存在していた神社を中心とする伝統的地域コミュニティは衰退している。しかし、高速道路の騒音については慣れのためか、かつて心配されたほど高速道路の騒音問題は大きくない。一方、川津地区は坂出市の郊外化が進み、住民の生活圏が拡大しているわりには、神社を中心とする氏子集団や近隣の相互扶助組織である同行が残存している。また、騒音問題については坂出ICと高松自動車が連結していることもあり、西部地区よりも気になる人が多くなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
島の調査においては、自治会長のヒアリング調査により、調査票の作成のためにも、当初予定していなかった島の人口分析を詳細に行う必要が生じ、住民調査ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、23年度の積み残しとなった島の住民調査と、瀬戸大橋の夢が破れてしまった坂出市と坂出市中心部のまちづくりについて調査を行う。
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