研究概要 |
まず,関東圏,中京圏,関西圏の3つの大都市地域に関する社会地区分析の結果,やはり大阪の停滞と東京における産業構造の転換が確認された.興味深いのは豊田を中心とした名古屋の堅調さで,グローバル企業であるトヨタとそれを支える地元産業の連関が非常に重要であることが改めて確認されたといえる.これにたいして東京の変化は,これまでの城東や城南の工業地帯の集積にもとづいていた製造業の比重が急激に低下し,港区を中心に渋谷・新宿へと連なる情報・メディア・サービス産業の集積が目立っている点である.しかしながら,その基盤となっているのは大阪との比較によって明らかなように,国内の放送・新聞などのマス・メディアが東京に集中しているためであり,かつてのような,製造業の集積にもとづき,ソニーや富士通などのグローバル企業によって世界都市としての展開を図るというほどのところまではいっていないと判断できる.そのことは東京都や特別区などの自治体レベルでの政策の内実を確認することによっても知ることができる.確かに東京都では,デザイン・アニメ関係の振興が謳われてはいるが,まだまだ都内に多数存在する中小の製造業へのこれまで通りの支援策が中心である.情報産業の集積が顕著に見られた渋谷区や新宿区においても,事情は同じで,政策的な課題としては取り上げられていても,その内実は旧態依然としたもので,重点的かつ本格的にそのような方向が打ち出されているわけではないことが確認された,
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