研究課題/領域番号 |
22530565
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡田 あおい 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (50246005)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 社会学 / 歴史人口学 / 家族史 / 宗門改帳 / 世帯構造 / 直系家族 / 家 / 家族類型 |
研究概要 |
本研究は、徳川後期農民の世帯形成メカニズムを明らかにすることが目的である。東北日本2地域(会津山間部4か村・二本松平野部3か村)、中央日本2地域(美濃平野部6か村、信州山間部2か村)を研究対象地域とし、史料は主に宗門改帳を用いる。観察は、まず両地域の人口学的指標を明らかにし、地域特性を見出す。次に、両地域に共通する農民世帯の世帯構造を分析し、世帯形成のメカニズムを明らかにする。さらに、両地域の人口学的条件がどのように世帯形成に影響を及ぼし、どのような歪みを生むのかを解明したい。本研究3年目にあたる平成24年度は、主に以下の3つの柱を立てて作業を進めた。昨年度に引き続き、本年度も研究の基礎固めにすべての時間を費やしたことになる。 第一は、データベース構築作業である。平成24年度は昨年度に引き続き主に中央日本2地域のデータベース構築のための基本的な作業をおこなった。具体的には、基礎シート(BDS)の確認・原史料である古文書とのつきあわせと整理・データベース構築の準備・入力テストである。史料の特徴を明確にし、コンピュータ入力のテストを行いながらデータベース作成の指標を再検討した。次に、すでにコンピュータ入力作業が終了している東北日本2地域、及び美濃平野部1か村のデータクリーニングを行った。 第二は、家研究の先行研究の整理である。平成24年度は、社会学領域の家研究の整理を主におこなった。また、信州をフィールドとする家研究のモノグラフの収集も行った。 第三は、現地調査および史料調査である。信州山間部の現地調査を実施した。また、昨年度に引き続き、すでにこの地域で史料調査及び整理を行っているグループと協力し、史料調査(北内田村)を行った。この村は本研究の対象地域の村と隣接している。史料の残存状況の確認と聞き取り調査を行い、史料の一部をデジタルカメラで撮影し、史料の特徴を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、研究の性格上、データの確認作業、関係史料の解読、データベースの構築作業にかなりの時間を費やす。平成24年度もデータの確認作業がかなり難航し、当初の予定よりこの作業に時間を割く結果となった。本研究は予定した計画よりも結果的にはかなり遅れているが、データの確認作業が本研究にとって最も基本となる、しかも重要な作業であるので、研究が遅延しているは十分承知したうえで、予定を変更しても時間をかけて慎重にこの作業を継続している。また、研究の遅延を解消するため平成24年度はマンパワーの補強を考え、ある程度本研究に精通し、史料の知識を持った方にデータ入力の補助をお願いしていたが、やむを得ぬ事情により補助を辞退され、その後任となる適任者を見つけらることができなかったことも研究が遅延している理由となっている。しかし、既にコンピュータ入力済みのデータに関しては、順調にデータクリーニングがおこなわれており、平成25年夏にはある程度のデータ分析が可能になると考えている。また、先行研究の整理に関しては、信州の家研究のモノグラフを除き順調に進んでいる。信州山間部の調査は、聞き取り調査と史料調査に時間がとられ、平成24年度は信州をフィールドとする家研究のモノグラフの文献調査まで手が届かなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も計画の遅れを取り戻すために、データベースの構築作業を最優先に研究を進める予定である。平成25年度は信州山間部地域のデータベースの完成を目指す。しかし、平成25年度は本研究の最終年度でもあるため、データベース構築作業と並行してデータクリーニング継続中の東北日本2地域と中央日本2地域の一部のデータを用いて、人口指標と世帯構造の分析をおこない、未完成の状態になる可能性はあるが研究をまとめ、今後の世帯構造研究の方向性と研究の可能性を提示したいと考えている。本研究の遅延を解消するため、平成25年度もマンパワーを補強することを考えたが、研究の性格上ある程度本研究に精通している人材を確保する必要があり、現時点では適任者がおらず、マンパワーの補強は断念せざるを得ない。 研究をまとめる過程で、本研究の成果の一部を平成25年12月に開催される歴史人口学セミナーで報告し、研究の方向性を明確にして行きたい。本研究はデータの確認作業が難航し、この作業に本研究の大部分の時間を割いている。そのため当初の計画通りには作業が進んでおらず、この遅れを取り戻すよう努力するが、現状況では平成25年度末までに研究計画のすべてを完成させることは難しい状況であると判断せざるを得ない。本研究は、データベースさえ完成すれば、既存の家研究では皆無である大量データを用いた定量的分析が可能になり、近世農民社会の家システム研究の新たな知見が得られることを確信している。本研究は、家族社会学と歴史人口学をつなぐ学際的研究として位置づけられ、その意義も大きく、是非とも完成させなければならない。したがって、平成25年度末までに本研究が完成しなかった場合にも研究は継続させ、完成時には著書としてまとめ、本研究を世に問うつもりである。
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