初年度である今年はNY郊外Flushing地域での中国系移住者の生活実態について調査研究を行った。中国系のボランタリー・アソシエーションを中心にNYあるいはFlushingに地域を限定してコンタクトを取った。2010年9月3日から10日の実態調査では、台湾系、中国系、韓国系移住者の実態をこれら団体へのインタビューから明らかにした。当初予定していた質問紙による調査は団体の協力が得られず、実施できなかった。その結果は以下のとおりである。 1. Flushing地域に居住し、銀行などを展開する台湾系移住者は1960年代後半から70年代にかけて増加していった。それ以前、この地域は日本人移住者が多く、台湾系移住者は日本人との関係の中で、この地域に流入してきたことがわかった。台湾系はマンハッタンに入る余地がなかったともいえる。 2.日系、台湾系に次いで、この地域で大きな存在となっているのは韓国系移住者である。韓国系はプロテスタント系キリスト教会を中心とするコミュニティを形成している。これらの韓国系と台湾系移住者はいずれも1970年代(1965年の移民法改正以降)、この地域での居住を開始しているが、日本との関係を持つ人も多い点が注目された。 3.台湾系では商工団体、仏教団体、韓国系ではキリスト教関連団体が政治的な権利(特にニューヨーク市議レベル)面で代表を送り出す母体となっている。 4.1980年代以降には中国大陸から多くの移住者を受け入れ始めているが、その中では高学歴層が天安門事件を契機にアメリカに残り起業するといった状況があり、日本における中国系移住者と同じ構図のもとで、中国系移住者の新たな基盤が形成されている。ただし、台湾の独立派、法輪功団体など反共政治団体の力が日本以上に目立つことは注目された。
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