1.イタリア・プラートにおける中国系移住者の主な出身地域である中国・温州市の華僑・華人連合会を訪問し、送り出し地域と欧州華僑との関係についてインタビュー調査を実施した。また、その一貫で、日本から帰国した電気関連事業の企業家とのインタビューも行うことができた。この企業家によれば、帰国したことにより、温州ネットワークを利用し、ドバイ、ヨーロッパなどにもネットワークを広げることができたという。 日本と温州、温州と欧州という関係は相互に連関している。1920年代の日本への出稼ぎ労働者は関東大震災後、欧州へと出稼ぎ先を変えたことが現在のミラノ、パリ、バルセロナ等における温州出身中国系移住者のコミュニティ形成の契機となっているからである。 2.トロントにおける中国系移住者に関していえば、中国大陸からの移住は留学や技術移民などの直接渡航者ばかりではなく、香港など経由地を介した流れがある。さらに二次移民というべき東南アジア華僑・華人がインドシナ難民の一部に含まれており、トロント市内におけるチャイナタウン形成の中心的存在をなしている。これらの人々は出身地域ごとの同郷会あるいは宗親会組織を形成し、相互のネットワークをチャイナタウンの中に広げている。彼らの関係の結び目はこうしたボランタリー・アソシエーションと同時に宗教施設、教育施設を介して結び合っており、中文学校はこれらの人々の1つの結節点をなしている。 3.また、サンフランシスコに関していえば、従来のチャイナタウンとは異なり、郊外に新たな居住地域が展開しており、そこの中心的住民は大陸、香港、台湾およびインドシナ難民の中の中国系人から形成されている。彼らの相互の関係はトロント同様に、一部の中文学校(特に、小・中・高校性を対象とする)を中心に結ばれており、従来の中国系アメリカ人組織とは必ずしも直接的な関係をもつにはいたっていない。
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