研究概要 |
今年度は,対象地域である沖縄県八重山地域において過去に重大な環境変化を引き起こした自然災害について,文献調査と現地調査を行った。総合地球環境学研究所の西表プロジェクトの文献データベース,沖縄県立図書館での調査から,(1)1771年の宮古八重山津波(「明和大津波」),(2)津波後から第2次大戦後までのマラリア禍(とくに第2次大戦中の「戦争マラリア」),そして(3)第2次大戦後の主要な災害となった台風等の風水害について,地域社会の対応や変化を主要な研究対象とすることが望ましいと結論した。このうち(1)については,歴史的に古い事例であるため当初は予定していなかったが,本年3月の東日本大震災が社会にもたらしている甚大な影響を考慮して,研究対象として取り上げることとした。文献調査では,(1)についてはほぼ主要な研究書,論文,史料等の収集を終えた。(2)および(3)は継続中である。 現地調査として,(1)については,地域で言い伝えられている津波石,1980年代に郷土史家を中心に設立された慰霊碑,そして津波と人魚の関係についての伝承を利用した町おこしの事例について取材した。(3)については,1970年に廃村となった西表島の稲葉集落について,その集落史をまとめている住民への聞き取り調査を行い,森林伐採と水害の関係について知見を得たほか,調査出張中に平成22年9月の台風11号を実体験し,サトウキビとパイナップルの農地での被害状況を実査することができた。(2)については,今後,石垣島の台湾人コミュニティの調査を通して実施する予定である。
|