研究課題/領域番号 |
22530581
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
貞包 英之 山形大学, 基盤教育院, 准教授 (20509666)
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研究分担者 |
野上 元 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (50350187)
元森 絵里子 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (60549137)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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キーワード | 歴史社会学 / 自殺 / 自殺予防 / 過労自殺 / 生命保険 / 心中死 |
研究概要 |
本研究は、日本に展開されてきた自殺の特徴と変化を歴史社会学的に探るものである。デュルケムの『自殺論』以来、自殺は社会学にとって重要な分析の準拠点となってきた。しかし自殺の社会現象として特質が充分、分析されてきたともいいがたい。 それに対して、本研究は具体的な社会現象としての自殺を、近世、近代の日本をフィールドとして歴史社会学的に分析した。そのために文献的調査がなされるとともに、精神科医、医師、弁護士、NPOなどへのインタヴューをくりかえされた。 それによってあきらかにされたのは、1)前近代の自殺が意志の病として特権化されていなかったこと、2)しかし20世紀以降の社会では個人の意志の在不在を問う社会システムが自殺を深く規定してきたことである。近世においては、意志の病としての自殺が問題化された形跡は少ない。それに対し近代では、自殺は、人の意志が強く介在する現象として意味論的に再編され、まただからこそ解決すべき医学的病や社会的病理として社会システムのなかに組み込まれる。具体的には、「生命保険にかかわる自殺」と「過労自殺」の一般化がそれをよく示す。前者においては、自殺が意志の病として生命保険の支払対象にますます組み入れられることで戦後の家や中小企業の暮らしを深く規定し、また後者では、過労に基づく意志の病として少なくとも一旦は認定されることで、自殺は企業や労働者を縛る法的意味を大きくしたのである。 こうした分析によって、本研究は近代日本において、①自殺を治癒可能な病とみなす「医療化」、②自殺を経済システムと結び付ける「貨幣化」、さらに、③自殺を解決すべき政治資源とする「政治化」が進むことを照らしだし、それによって現代の自殺を考える上で重要な歴史的背景をあきらかにした。なおその詳細は、『『歴史社会学の可能性の再検討:自殺の系譜学的探究に準拠して』研究成果報告書』にまとめられている。
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現在までの達成度 (区分) |
理由
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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今後の研究の推進方策 |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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