2007年度に全東京都立高等学校において必修教科「奉仕」が開始された。これは日本におけるサービス・ラーニング展開の歴史において画期をなすことである。教育と実践を有機的に結合するコーポラティブ教育の一形態としてアメリカで始められたサービス・ラーニングは、日本では高等教育機関である大学において正課外や選択科目として導入された。しかし必修科目である点、そして受講生の人数規模が巨大である点で、都立高校におけるサービス・ラーニングの展開はまったく次元を異にするものである。2007年度の高校1年次に教科「奉仕」を履修した生徒の多くが2010年度には大学へと進学することをふまえ、教科「奉仕」の生徒・教員・地域社会への影響をインタビュー及び、2つの質問紙調査によって実証的に検討することを目的とする。 24年度は、研究年度の最終年度として、以下の調査を実施し分析を行った。①「都立高校生対象の質問紙調査の実施」として、昨年度教科「奉仕」終了直後の第一学年に対して行ったアンケート調査との意識の比較を行うために、前年協力いただいた高校において第2学年に対するアンケート調査を行った。②「大学生対象の質問紙調査の実施」として、教科「奉仕」を受講した都立高校卒業生と受講していないその他の高校生の卒業生との意識の比較を行うために大学生対象のアンケート調査を協力教員の協力に基づき、今年度後半に行った。③「都立高校の教科「奉仕」担当教員へのインタビューの分析」として、前年度までに行った担当教員のインタビューをまとめ、教科「奉仕」の教員への影響を分析した。④「活動受け入れ団体担当者へのインタビューの実施」として、協力いただいた高校の奉仕活動受け入れ団体にインタビューを行い、地域社会への影響を分析した。⑤「調査結果のまとめ」として、学会で報告を行い、報告書を作成し、協力高校にフィードバックを行った。
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