多くの途上国と同様に、バングラデシュでも農村から都市へと大量の移住者が押し寄せ、都市下層の人口は膨張し続けている。船舶リサイクル労働者の大部分は、そのような都市移住者およびその第二世代であるが、都市部で安定した職と充分な報酬を得ることは難しい。彼らは不足する収入を補うために、都市と農村を往復する「環流移動」や、稼ぎ手の早期育成を目的とした児童労働などの方策を駆使しながら、何とか家計を維持している。住民に満足な職と報酬を提供できぬままに、途上国の都市が成長を続ける背景には、そのような下層住民による生活防衛のための方策が、重要な役割をはたしていると考えられる。
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