研究目的:本研究の目的は、第1に、現代日本における家族内の高齢者-成人子関係を理解するための理論枠組みとして、(1)政策・制度要因論(公的政策・制度が、家族内高齢者-成人子関係に影響を及ぼす)、(2)「性別分業にもとづく双系」と「系譜における父系」の「並存」という視点、の2つを提案し、その有効性を実証的に検討することである。第2に、その結果をもとに、家族内の高齢者-成人子関係をよりよく支える政策・制度について考察することである。この目的のために以下の研究を行った。 レビュー論文の執筆:家族内の高齢者-成人子関係について先行の研究のレビューを行った。先行研究においても、現代日本の世代関係には「性別分業にもとづく双系」と「系譜における父系」の「並存」というパターンがみられ、欧米の世代関係とは異なることが確認された。 インタビュー・データの分析:介護と遺産の交換について、インタビュー・データの分析を行った。介護と遺産についての人々の意識にも、「性別分業にもとづく双系」と「系譜における父系」の「並存」というパターンがみられることがわかった。ただし「系譜における父系」意識にはジェンダーによる違いがあり、男性の方がこの意識をより強く持っていた。 同居の規定要因についての分析:量的調査の分析をおこなった。同居においても、「性別分業にもとづく双系」と「系譜における父系」の「並存」というパターンがみられた。既婚子との同居において、男性の場合は妻が健在の人と死別した人で同居率に差はないが、女性の場合は夫が健在の人の方が死別した人より同居しやすいことがわかった。 国際学会での発表:世代間のケアと女性のライフコースの関係について発表した。アジア・欧米における最新の研究動向を知ることができ、また同じテーマで研究する海外の研究者と情報交換をすることができた。 国内の研究会での発表:同居の規定要因について国内の研究会で発表した。有意義なコメントを得ることができた。
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