本研究は、被差別地区出身で離婚によってひとり親家族になった女性、あるいは、非婚で出産し、ひとり親家族になった女性と、その子どもたちに焦点をあて、わが国の社会においてマイノリティであることによる差別や排除が、離婚や非婚によってひとり親家族となったことに、また、女性であることにどのような影響を及ぼしてきたのか、さらに、マイノリティのひとり親家族であることが、彼女たちの生活の営みにどのような影響をもたらしているのかという、マイノリティであることの差別や排除とひとり親家族であること、さらに、女性であることの差別や排除との相互の関連を明らかにし、差別や排除が複合化するメカニズムの解明と、そのことが、当事者の日常生活にどのようなダメージをもたらしているのかという点について、生活者の視点から解明することにある。2012年度においては、以下の研究を行った。 (1)2011年度に、大阪、福岡、鳥取、徳島において、被差別部落出身のシングルマザーを対象に実施したアンケート調査データを集計・分析し、基本的属性にみられる特徴、就労状況、子育ての状況、生活上の悩み、被差別地区出身であることの被差別体験、女性であることの被差別体験、シングルマザーとしての被差別体験などについて実態を明らかにするとともに、複合差別の実態を検討し、全国人権教育研究集会で報告した。 (2)被差別地区出身のひとり親家族の親と子どもたち12名にインタビュー調査を実施した。これまでのインタビュー記録はひとり親34名、子ども11名である。これらのインタビュー記録をもとに、研究代表者、研究分担者、研究協力者それぞれで分析を行っている。2012年度中に、分析を終えることができなかったが、できるだけ早い時期に、報告書にまとめる予定である。 複合差別論の実証研究として多大な意義があると言える。
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