研究課題/領域番号 |
22530593
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研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
山本 起世子 園田学園女子大学, 未来デザイン学部, 教授 (50230545)
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キーワード | 歴史社会学 / 家族変動 / 優生政策 / 児童福祉 |
研究概要 |
平成23年度には、明治期~1970年頃までに実施された児童福祉(保護)政策の理念、計画の立案過程、遂行の状況、成果などについて調査を行った。調査から得た知見の概要は以下の通りである。 1.明治初期の児童保護事業は、棄児や孤児・貧困家庭の児童を対象とした民間の育児事業、および感化事業から始まった。 2.第1次世界大戦後、関東大震災を契機として児童保護事業は発展を遂げ、1925年には東京市で第1回全国児童保護事業会議が開催され、児童保護施設は全社会事業施設の約4分の1を占めるに至った。 3.さらに、児童保護法制が本格的に整備されたのは1930年代以降で、救護法、児童虐待防止法、少年救護法、母子保護法、保健所法が公布・施行された。1938年の厚生省新設に伴い、社会局児童課が設置された。 4.1930年代には児童保護が国家的見地から、事後の保護より事前の予防的援助と指導へ、児童保護より母性保護へと発展すべきものであり、さらに、要保護児童や「精神的、身体的、環境的に欠陥を有する児童」の救護・救済だけでなく、一般児童の福祉増進(保健や体力向上など)を目的とすべきものとなった。 5.上記4の理念を法制化したのが、1947年成立の児童福祉法である。異常の早期発見のため、妊産婦・乳幼児の保健指導が推進された。1950年代後半~60年代に児童福祉は社会福祉の中で大きな比重を占めるようになり、障害児施設数は顕著に増加、未熟児の死亡率を低下させる対策も進展した。 6.それと同時に、子どもの生命を管理する政策、すなわち優生保護法による優生政策および障害の発生予防対策も進行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に実施すべき調査は、概ね順調に進行した。ただし、対象期間が長期にわたるため、1980年代以降の調査が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、家族法(民法)の成立・改正過程と家族変動との関係を明らかにする。家族法は、その時代の家族規範の形成に大きな影響を及ぼし、逆に、家族生活の実態や家族意識の変化が家族法の改正に影響を与えることもあり、両側面からの考察が不可欠である。したがって、明治民法、1920年代に立案された臨時法制審議会の「民法改正要綱」(親族編・相続編)、戦後における民法改正を対象に、それらの理念と立案過程、内容について補足的調査を行う。家族に関する規定の中でも、とくに戸主権(居所指定権)、相続(家督、遺産)、妻の財産管理権など能力規定、老親に対する扶養義務の変化に焦点を絞る。研究方法としては、図書、新聞・雑誌記事の閲覧・収集を行う。
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