今年度(2012年度)は最終年度であるため、補充調査を行いながらこれまでの成果をまとめ、研究会・学会報告、論文作成を行った。研究会・学会での質疑やコメントからは多くの示唆を得た。 本研究の目的は、農村住民が持続的で安定した生活および農村社会の維持・再生をはかる方法の1つとして都市との交流を行う際、いかに「消費される」ことなく自立的でありえるかを明らかにすることを通して、ムラや地域の維持・再生のあり方を考えることにあった。 「消費されない農村」のモデルとして、岡山県高梁市備中町平川地区を調査地として、3年間調査を続けてきた。「『消費される農村』とムラの主体性」という題で、2012年度日本村落研究学会大会(10月27日、鳥取県智頭町)において報告を行った。 また、“An Analysis about the Subjectivity of the Active Mura”(動くムラの主体性について)というタイトルで、吉備国際大学大学院の紀要に投稿した。 本研究を通して、多くのムラを見てきた。メインのフィールドは平川地区であるが、西日本の中山間地および韓国の農村も含め、比較してきた。それぞれのムラは固有の歴史や文化を持つが、その中で形成されてきた生活意識(有賀喜左衛門)の影響を受けながら、ムラの主体性を形成・保有していた。都市と農村は交流をぬきには相互に存立しえない状況がある。ムラの側では、都市の欲望を十分に意識しつつ、それに振り回されるのではなく、リーダーや田舎のプロデューサー等、ムラのキーパーソンたちの判断で、交流を生み出し、続けている。どこまで「消費の対象」とするかを考えながら、交流を通して相互の「文化変容」を通した成果を積み上げている。その結果、「消費されない農村」が可能となっていることを明らかにした。
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